食中毒の基本知識
食中毒とは、食品やその周りにある容器包装、器具に起因し発生する胃腸炎、神経障害などの中毒症の総称です。食中毒になると多くの場合、嘔吐や腹痛、下痢などの症状を起こします。なお、食べ過ぎや飲み過ぎによる下痢などは食中毒に含まれません。
発生状況
まずは食中毒の発生状況を見ていきましょう。暑い時期に増えるイメージがありますが、実は寒い時期に発生することも多く、年間を通して発生している状況です。寒い時期に食中毒が多くなるのは、感染力の強いノロウイルスが蔓延しやすいためです。病因物質別の食中毒発生状況を見ると、事件数が最も多いのは「アニサキス」で、患者数が最も多いのは「ノロウイルス」です。
「細菌性食中毒」
食中毒の分類は病因物質(食中毒の原因となる物質)によって分類されます。食中毒菌に侵された食品を食べることで発生する食中毒を「細菌性食中毒」と呼び、「感染型」と「毒素型」の2つに分けられます。感染型は食品の内部で増殖した原因菌を食べ、腸管内で感染して発症するものです。毒素型は食品の内部で病因菌が増殖する際に毒素が発生し、その毒素と一緒に食品を摂取することで発症します。また、摂取した菌が後々腸管内で毒素を生み出し、それが原因で発症する食中毒を「生体内毒素型」と呼びます。生体内毒素型の主な病因菌は「ウェルシュ菌」や「腸管内出血性大腸菌」です。
食中毒菌が増殖する条件はいくつかあります。まずは「栄養」です。人間にとって必要な栄養は、細菌にとっても栄養源となります。例えば、調理器具などに食品の汚れが付着していた場合、それが細菌の栄養源となります。また、食品中の「水分」を利用して細菌は増殖します。加えて「湿度」も細菌が増殖する条件となります。多くの細菌は36℃前後で増殖しやすくなります。これらの条件が揃うことで、食中毒が発生する確率が高まります。
「ウイルス性食中毒」と「寄生虫による食中毒」
細菌性食中毒以外では、「ウイルス性食中毒」と「寄生虫による食中毒」があります。ウイルス性食中毒のほとんどはノロウイルスによるもので、感染症の症状も同時に引き起こします。ウイルスが付着した食品だけでなく、感染した人間の手指などを経由して二次感染するため、感染力が非常に強いです。
一方、寄生虫による食中毒とは、食品に含まれる寄生虫を摂取することで発生するものです。激しい痛みや嘔吐などの症状を引き起こします。近年はアニサキスによる食中毒の発生件数が増えているようです。寄生虫の多くは食品を加熱もしくは冷凍することで死滅させられますが、お刺身などの生で食べる料理は食中毒が発生する確率が高くなります。